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福祉施設の実践事例

実践事例 詳細

コロナ禍における認知症オンラインカフェ実施の取り組み

種別障害者施設
開催年2020
テーマ新型コロナ感染対策、ニューノーマルな支援
コロナ禍における認知症オンラインカフェ実施の取り組み

宇部市北部西地域包括支援センター

 認知症カフェは、認知症当事者の方やその家族が地域の中で他の住民と交流したり、介護・福祉・医療の専門家に相談したりすることができる場の提供を目的とし、地域社会からの孤立を防ぎ、心理的負担の軽減に寄与するなどの効果が期待されている。
 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、人が集まり対面での飲食や会話をともなう認知症カフェにおいて、コロナ禍で休止となった場合が多く、現在においても再開の目途がたたない認知症カフェが少なくない。
 本レポートでは、山口県にある宇部市北部西地域包括支援センターが、市の協力体制のもと、オンラインを活用し認知症カフェを実施した事例を紹介する。

[1]認知症オンラインカフェ開催の経緯

 宇部市北部西地域包括支援センター(宇部市北部西地域包括支援センター・センター長 山本まゆみ)では、認知症対応型共同生活介護グループホームふなきとともに、認知症カフェ「グリーンカフェ」を主催。新型コロナウイルス感染症の拡大以前は、2か月に1回ほどの頻度で、認知症当事者の方や家族、施設職員、専門職員など10人程度が集い、お茶会やお菓子作りなどを行っていた。
 同センターでは2020年2月の開催以降、コロナ禍の影響により認知症カフェ実施を見合わせていたが、認知症当事者の方や家族らが皆で会話できる場がなくなってしまったことを憂慮していた。そうした折、2020年7月より宇部市で認知症カフェに対して、1回につき10台までタブレットの無償貸与を行うという、認知症カフェのオンライン開催支援が開始されたことをきっかけに、同月に「グリーンカフェ」のオンライン開催にふみきった。参加者への告知方法としては、チラシの配布や自治会への回

 

オンラインでの認知症カフェ開催告知のチラシ

[2]認知症オンラインカフェの実施方法

 オンラインでの開催にあたっては、宇部市より貸与されたタブレット端末を使用し、Web会議システム(Zoom)を用いて認知症カフェ参加者の自宅や各施設に接続した。
 接続先は、圏域内の医療機関、グループホーム、デイサービス事業所の3か所と、認知症当事者の方や家族など地域住民の自宅3か所で、計6か所。
 各接続先には、タブレットやWeb会議システムの接続・操作を行うなどのサポートを行う担当職員を配置することによって、施設だけでなく各家庭への接続が実現した。
 協力者として、医療機関の看護師や接続先施設の職員、地域のボランティアで構成されたグループホームの運営推進委員、市の職員やケアマネジャーなどのさまざまな立場の者が開催に携わったという。

 

自宅からの参加者と支援を行う担当職員

[3]実施内容と参加者の反応

 初のオンラインでの実施となった7月、事前に運営上の会議を行い、担当職員間でタブレットの操作方法などをしっかり確認を行っていたことで、大きな接続トラブルなどもなく「グリーンカフェ」は無事に開始。午後2時から約1時間半実施した。
 「外出自粛期間中、家でどのように過ごしていたか」などの近況報告から始まり、認知症当事者の方や家族などの参加者がWeb会議システムに慣れていないことを考慮して、首の体操や宇部市に関する○×クイズ、ハンドベルの演奏など、かたくならないようリラックスして参加できる雰囲気づくりに気をつけたということだ。また、接続先に医療機関があることを活かし、新型コロナウイルス感染症対策のミニ講座を行ったという。
 実施にあたって認知症当事者の方に配慮したこととして、タブレット自体に馴染みがなく、人や自分が映ると驚いてしまうといったことがいったん起きたが、ご本人にとって馴染みのあるテレビへ接続して画面を映すことで、受け入れてもらえたという事例があったということだ。
 近況報告のなかでは、認知症当事者の方がマスクの着用を受け入れられないという状況があり、コロナ禍で外出時や対面時にはマスクの着用が必須となっている環境下において、家族の方が遠慮してデイサービスの利用を控えるなどといった状況があるということがわかった。常に家の中にいる状態のためフレイルを心配する方や、他人と直接会って話すことが難しいということで、当事者の方にも家族にもストレスが溜まっているなど、さまざまな悩みを抱えていることもわかった。
 そうしたなかでのグリーンカフェの開催は、「人と会話ができたことで気分転換になった」「同じ認知症家族同士の悩みを共有でき不安の軽減につながった」などといった声を多く聞くことができたという。

 

施設からの参加者

認知症オンラインカフェ実施の様子

[4]オンライン開催の利点について

 オンラインでの認知症カフェ開催は、より幅広い方にもご参加いただけるものになった。対面時のグリーンカフェの開催場所は公共交通機関の便が悪く、車などの交通手段がないと来所が難しいという状況があったが、オンラインによってどこからでも参加ができるようになった。2020年9月に2回目の認知症オンラインカフェを開催した際には、隣の圏域から参加した人もいたという。
 また、オンラインならではの利点として、認知症高齢者の家族が、実際に家の中でどのように介護をしているのか、ということをうかがうことができたという。お盆に滑り止めを付けたり、認知症当事者の方に危険のないよう配慮して角が丸いサイドテーブルを自作したりなどといった工夫をされながら介護に取り組んでいる事例もあり、その実物用具や家庭で実用している様子が映像として見えることで、通常の対面式の認知症カフェでは伝わりづらいような情報の共有もできたという。
 参加者からは、オンラインはハードルが高いと思っていたが意外と気軽にできたという声や、自宅にいるので緊張せずに話せたという声があった。

[5]オンライン開催実現の要因と今後の取り組みについて

 宇部市北部西地域包括支援センターによると、オンラインでの認知症カフェ開催が実現できた大きな要因は、ひとつに支援スタッフの人員が確保できた点、ふたつに宇部市によるタブレット貸与によって機器が確保できた点であるということだ。
 「グリーンカフェ」の今後の開催については、宇部市によるタブレット貸与が現時点では2021年3月末までであることから、少なくともその期限まではオンラインカフェを継続していく。すでに12月にも実施し、参加者に好評を得た。9月からは、宇部市の社会福祉協議会も接続先に加わり、さらに多様な情報共有の場となっているということだ。
 宇部市からのタブレット貸与が終了予定である2021年4月以降の対応としては、コロナ禍の状況も鑑みて現状は未定だが、職員が地域に訪問するかたちでの認知症カフェの実施など、その継続に向けて検討中である。

 

※本文中の写真はご本人、家族の了解を得て掲載しています。