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福祉施設の実践事例

実践事例 詳細

職場における企業在籍型ジョブコーチの効果的かつ具体的な支援内容について

種別障害者施設
開催年2019
テーマ職場づくり・専門性向上
職場における企業在籍型ジョブコーチの効果的かつ具体的な支援内容について

社会福祉法人 阪神福祉事業団

 千葉県四街道市にある社会福祉法人 翠昂会(すいこうかい/理事長 川﨑鉄男氏)は法人内に「新型コロナウイルス対策会議」を設け、同法人が運営する5つの施設・事業所に対応方針を徹底するとともに、保健所との情報共有のもと、独自の「新型コロナウイルス対応マニュアル」を整備し、感染防止のための取り組みをすすめている。
 本レポートではとくに、同法人が運営する障害者支援施設「永幸苑(えいこうえん)」の取り組みを中心に紹介する。永幸苑は定員80名で、身体障害者利用が中心の入所施設である。

[1]「新型コロナウイルス対策会議」が定める対応方針

 同法人は今年4月初旬、国内の新型コロナウイルス感染拡大が一層大きく報じられ始めた時期に、法人内に「新型コロナウイルス対策会議」を設置した。構成員は、法人の理事長、法人事務長(施設長兼務)、各施設の入所サービス管理責任者、通所サービス管理責任者の5名。
 定期開催ではなく、新型コロナウイルス対応に関する協議案件発生時に都度実施し、4月当初は対応マニュアル作成や事業継続計画の確認などのため毎日開催、その後、外出や面会ができなくなっている状況下における利用者支援のあり方に関する協議などをはさみ、8月の現時点では週に1~3回開催しているという。
 最近の協議案件としては、利用者の感染防止対策としてのマスク着用と熱中症対策が必要なこの時期における支援のあり方について、また、長期継続対応が必要な備品などの定期消毒が適切に行われ続けているかの検証協議、さらには地域感染者発生エリアの確認や緊急時の搬送先病院の確認など、である。
 同会議では、こうした法人全体の対応方針を策定したのち、各事業所への周知徹底が行われている。

 

対策会議の光景

[2]多角的な対応マニュアルの整備と職員間の感染防止策

 翠昂会は「新型コロナウイルス対策マニュアル」を策定、その内容は必要に応じ、都度更新されている。内容は、感染防止対策の基本、職員や同居家族の体調不良時対応フローチャート、新型コロナウイルス対策マニュアル、面会の対応方法、オンライン面会に関する取り決め、備品関連、事業継続について、感染時対応についてなどの柱により構成されている。
 そのなかには、防護服の着衣・脱衣手順説明書、面会時に使用するリモートツールの操作方法なども含まれているほか、職員の体調状況による出勤判断についても具体的に記され、わかりやすいものとしている。
 さらに新型コロナウイルスに関する事業継続計画(BCP)については、緊急事態宣言中をはじめとし、3つのフェーズに分け、さらに施設内に罹患者が発生した場合の感染者、濃厚接触者、他の利用者を中心とした非感染者への対応のあり方をそれぞれ分けてマニュアル化している。

 

◆職員間の感染防止のために

 職員間の感染防止の取り組みとして、職員が一堂に会しての定例ミーティングは設けず、現在の朝礼は、事務所職員、各部署1名、夜勤者、シフトチーフの参加とし、換気と間隔に留意しつつ行われている。
 なお、各職員への伝達は上記のシフトチーフを中心として小規模で実施されており、一人ひとりの利用者の状況などについて申し送りが必要な事項は、職員同士で、横並びで距離を取って行うなど、対面式を取らないようにして申し送りなどを実施している。
 さらに現在、政府の要請に応じ、人と人との接する機会を減らす目的として有給休暇取得などによりなるべく出勤職員を減らすよう努力している、とのことであった。
 また、感染者発生時のためのゾーニングや隔離方法については、同施設2階部分の、いわゆる突き出しスペースにある居室を、感染が疑われる場合などの入院一時待機状態が発生した時のために用意しており、当該スペースに通じる通路は透明ビニールカーテンで遮断、その際対応する職員も固定化し、その際に使用する職員の動線や設備についても細かい取り決めがなされている。

 

遠隔用ビニールカーテン

[3]面会実施のための支援

 新型コロナ禍発生以降、施設利用者への面会は平日11~14時とし、15分間を目安に事前に予約を取り1階に設けた特設コーナーにて実施していた。しかし、県内の感染者が一定以上発生している現在は、面会者の施設内立ち入りは行なわないかたちとし、ガラスドア越しにお互いの無事が確認できる方法によって面会するよう取り決めをしている。
 なお、ご家族から利用者への届け物は、施設外にて受け取りを実施している、とのことである。

 

永幸苑玄関 非接触型体温計

 

 さらに全家族に連絡を取り、面会希望者にはZoomを利用して、日時を決めて在宅からのリモートで実施している。ご家族が高齢者の場合、パソコンなどを使うことが困難なこともあるが、職員が電話を通じて使用方法の説明をこまかく行い、リモート面会を実施している事例もある、という。

[4]施設利用者への配慮と活動継続支援

 日中の「生活介護」において、利用者全員が一か所に集まってのアクティビティはこの時期は中止としており、利用者一人ひとりのリスク軽減のため、基本的には部屋で過ごしていただくようお願いをしつつ、日中活動については、たとえば紙すきの手工芸活動など、これまでの日中活動が継続できるよう、職員が個別に対応し支援している。
 なお、職員はアルコールジェルポーチを常に携帯しており、自身や利用者の手指消毒用として使用している。施設内の除菌については清掃担当職員が実施しているが、利用者の車いすや手すりなどの福祉機器については、出勤している介護職員が午前、午後にそれぞれ除菌清掃を実施している。

 

職員が携帯するアルコールジェルポーチ

 

 利用者の食事についても、対面式では座らないようにし、座席間の距離も空けて、換気も行いつつ、さらに、利用者の食事時間も限定的でなく、一人ひとりの思いによって、食堂入りのタイミングをずらしながら実施している。
 さらなる利用者への支援の工夫として、外出・外泊が困難な今、気分転換につながるよう、地域の外食産業事業者からの食事の出前を行なうこともあり、メニューは選択制で、平時とは違った雰囲気も楽しめるため、利用者には好評である。

 

ソーシャルディスタンスの意識づけを図る取組

[5]感染防止のための機器の利用

 法人内のもうひとつの障害者支援施設「ピクシーフォレスト」においては、コロナ禍発生以降、職員間のインカムを活用するようになった。1台ずつ保有することで、職員が集まる機会や職員間の直接の接触機会を減らしつつ、情報の伝達と共有に効果を発揮している、という。とくに、同一チャンネルで全職員が同時に聴くことになるため、業務の効率化と職員間の密の状態を生まない対応が可能となっている。

 

インカム使用の様子

 

 また、各施設の玄関付近には、亜塩素酸水を空間に噴霧して、空気中に浮遊する細菌の除菌やウイルスの不活性化を促す効果があるとされている除菌装置を設置し、活用している。
 さらなる利用者への支援の工夫として、外出・外泊が困難な今、気分転換につながるよう、地域の外食産業事業者からの食事の出前を行なうこともあり、メニューは選択制で、平時とは違った雰囲気も楽しめるため、利用者には好評である。

 ほかにも現金に触れる機会の減少を目的とし、施設内販売においてもキャッシュレス決済が可能となる端末の導入を予定しており、時代の流れにも即している。

 

除菌装置「Devurus AC」(写真中央)

[6]通所サービス利用者の動線確保と県内施設の相互支援

 通所サービスの利用者やその支援にあたる職員は、施設内の動線を明確に分けて対応している。活動するスペースを固定化するとともに、必要な箇所には仕切りを設けるなどの対応によりサービス利用がなされている。
 また、通所サービススタッフは、入所されている利用者と接しないようにし、通所サービス実施時間帯以外は、施設内の消毒を行うなどの協力をしている。
 さらに、例えばクラスターが発生し、当該施設に支援スタッフを集中するなどした結果、法人内の他の施設で人員体制が不足する状況が発生するおそれがあるが、そのような場合、他の法人施設が協働して職員を派遣して対応する「県内協定」の実行化をすすめている。
 これには自治体、知的障害者ならびに身体障害者施設の県段階の協議会が協力しあって対応することとしており、現在、その運用のための取り決めの最終段階に入っている、とのことである。

 

新型コロナウイルス対策 啓発ポスター テーブルに設置している消毒セット

 

(本記事は2020年8月取材当時のものです)